デジタルツインの企業一覧!5つの活用事例とメリット
現実空間を仮想空間に再現する「デジタルツイン」。近年のIoTやAI、VRの技術革新を背景に、さまざまな分野でDX化が進んでいます。
- デジタルツインサービスを提供する企業一覧やカオスマップを探している
- デジタルツインを活用している企業事例を参考にしたい
- デジタルツインで革新的なビジネスモデルを探求したい
本記事では、デジタルツイン業界の企業の種類と、各企業の取り組みを詳しく解説します。
また、デジタルツインの企業活用事例やデジタルツインの概要についても解説しますので、ぜひ記事を参考にデジタルツインを活用した未来のビジョンを構築しましょう!
デジタルツイン業界の企業一覧
まずはデジタルツインを提供する企業一覧をご紹介します。
カオスマップと、デジタルツイン企業の種類を3つに分けて解説します。
デジタルツイン企業のカオスマップ
「カオスマップ」とは米国のシンメトリー社(Symmetry Dimensions Inc.)が独自に業界リサーチを行い、市場動向をまとめたものです。
デジタルツインの活用が早かった建設業界や製造業界は、すでに社会実装フェーズへと進んでいます。
現在では官民一体となってスマートシティ実現に向けた取り組みが進められているのです。またヘルスケア領域(医療分野)においてもデジタルツインの技術が注目を集めています。
患者の健康状態・投薬・手術のシミュレーション、医療施設の最適化などの活用も可能です。ビッグデータを活用し、患者のヘルスケアに役立てることができると期待されています。
3種類の企業領域
デジタルツインにかかわる企業は、大きく3つの企業に分類できます。
領域 | 内容 |
---|---|
コンサルティングサービス提供企業 | 「製造業」「建築」「医療」「環境」などの各業界のデジタルツインを含めたDXの支援を行っています。 |
ソリューション提供企業 | 各業種業態において専門性に特化し、業界で活用可能なデジタルツインの開発に取り組んでいます。 |
プラットフォーム開発企業 | デジタルツイン技術を活用したサービスやツールを提供しています。「3DCAD」「点群データ」「マップ制作」「エンジン」などさまざまな分野が存在します。 |
次章では、各分野でサービスを展開する企業を紹介していきます。
デジタルツイン企業3つ【コンサルティング】
コンサルティング提供企業は、さまざまな業界のDXをトータル支援している企業です。
日本における代表的な企業を紹介していきます。
1.Advalay|3Dモデル生成や動画制作など幅広い集客事業を展開
住宅・製造業・小売り・美術館・博物館・イベントをはじめとした多種多様な業種のバーチャルツアー制作サービスを提供しています。
撮影実績は1,800施設に及び、業界トップクラスです。
実空間をそのままバーチャル上に再現できる「Matterport」の映像制作事業の他、システム開発事業・エアー遊具運営・スチール撮影・HP制作・SEO対策など幅広い集客事業を展開しています。
制作しているMatterport映像とは、下記のように、実在する空間をバーチャル上でそのまま体験できる3Dモデルのことです。
この3Dモデルは、広報・PRや採用、社内共有用の資料などさまざまなシーンで活用されています。
2.NTT DATA|シミュレーションの技術開発も実施
NTTはIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を掲げています。
これはスマートシティを支えるネットワーク・情報処理基盤を指しており、IOWNの主要構成技術の一つに「デジタルツインコンピューティング」が位置づけられています。
NTTDATAではデジタルツインのコンサルティング提供に加えて、デジタルツイン同士を掛け合わせ、さまざまなシミュレーションや未来予測を行う技術開発に取り組んでいます。
2023年10月には、デジタルツインのエンタープライズ領域での活用促進目的として、NVIDIAとの協業範囲をイタリア・ドイツから日本へ拡大し、日本でも「NVIDIA Omniverse」を活用したデジタルツイン構築・提供をスタートしました。
(参考:https://www.nttdata.com/jp/ja/services/digital-twin/)
3.電通デジタル
2023年10月に電通デジタルは、AIを活用した企業の次世代マーケテイング活用を統合的に支援する、AIサービスブランド「∞AI(ムゲンエーアイ)」を発表しました。
「∞AI(ムゲンエーアイ)」とは、企業が顧客とのエンゲージメント向上を目指すため、AI活用によるサービス・プロダクト開発に総合的に対応するための新しいサービスです。
3つのAIアプリケーション(∞AI Ads1(ムゲンエーアイアズ)・∞AI Chat(ムゲンエーアイチャット)・∞AI Contents(ムゲンエーアイコンテンツ))の基盤となるプラットフォーム「∞AI Marketing Hub(ムゲンエーアイマーケティングハブ)」を提供開始しています。
(参考:https://www.dentsudigital.co.jp/news/release/services/2023-1005-000114)
デジタルツイン企業4つ【ソリューション提供】
この章ではそれぞれの業界においてデジタルツインを活用したソリューションを提供する企業をご紹介します。
1.製造業|TOSHIBA
TOSHIBAはものづくりIoTクラウドサービス「Meister Manufact X」を提供しています。
これは東芝が長年培ってきたものづくり現場のノウハウをもとに、製造IoTデータの蓄積・活用を支援するクラウドサービスです。
製造業向けのデジタルツインを活用し、ものづくりのCPS(Cyber physical system)を実現しています。
(参考:https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/manufacturing-ict/meister-manufactx.html)
2.医療|PwC
PwCは科学的シミュレーター「Bodylogical®」を独自に開発しました。人体のデジタルツインを作成し、将来の健康予測や、さまざまな治癒選択・健康管理シナリオの検討を可能にするものです。
ここで用いられるアルゴリズムは科学的に証明された知見に基づいており、生活習慣の変化や、薬物療法に対する反応性を個々人レベルで予測します。
これまでの平均的エビデンスに基づく医療から、個別化医療(パーソナル・ヘルスケア)へ変革するツールとなっています。
(参考:https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/newsletters/hpls-newsletter/back-number2201.html)
3.建築|鹿島建設
鹿島建設はオービック御堂筋ビル新築工事(大阪市中央区)において、各フェーズの建物データの連携を可能にするBIM(Building Information Modeling)によるデジタルツインを実現しました。
企画設計フェーズ・施工フェーズにおいて、BIMによるデジタルツインを活用することで、建築プロジェクトにおけるさまざまな業務の効率化を図り、建物資産価値の向上を実現しています。
さらに竣工後の維持管理・運営フェーズにおいても、設備の最適調整による省エネ化を実現。
また、機器や建物のライフサイクルコスト低減に向けたトータルソリューションにもつながっています。
(参考:https://www.kajima.co.jp/news/press/202005/11a1-j.htm)
4.スマートシティ|清水建設
豊洲エリアは、2019年5月に国土交通省スマートシティモデル事業において、先行モデルプロジェクトに選定されました。
また、同年11月には「豊洲スマートシティ連絡会」「豊洲スマートシティ推進協議会」が設立されています。
幹事企業の清水建設は、街のスマート化に向けた取り組みにデジタルツインを活用しています。
建築インフラと土木的な基礎インフラをBIMデータと融合させ、現実空間をデジタル上で仮想モデルの構築。まちづくりプロジェクトのデジタル化を進めています。
(参考:https://www.shimz.co.jp/toyosu/concept/smartcity/)
デジタルツイン企業2つ【プラットフォーム開発】
現在デジタルツインを実現するためのプラットフォームは数多くあります。その中でも注目されているプラットフォームを2つ紹介します。
1.Matterport|点群データ生成技術を開発
アメリカのMetterport社が提供するサービスで、日本にも代理店が複数社存在しているため、サポートを受けやすいのが特徴です。
Matterportが生成する3Dモデルやウォークスルーの精度は非常に高く、リアルな疑似体験を提供できます。
またカスタマイズや編集機能が豊富なため、オーダーメイドでデータ改善ができ、自社の活用目的にあわせて制作することができます。
(参考:https://matterport.com/ja/industries/case-studies-0)
2.AUTODESK|3DCADの構築ソフトウェアを開発
AUTODESKは3D技術を使ったデザイン・設計、エンジニアリング、エンターテイメント向けソフトウェアを開発販売している企業です。
AUTODESK製品の中でも、精度の高い2D・3D図面が作成できるAUTOCADは、建築業界において幅広く使用されています。
(参考:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01970/030200006/)
デジタルツインの企業活用事例5選
デジタルツインの技術は、すでに下記の通りさまざまな業界で使用されています。
- 不動産
- 製造(工場)
- 建築
- 医療
- 行政
この章では企業がデジタルツインをどのように活用しているのか実例を紹介します。
1.不動産|リストサザビーズ
日本の大手高級不動産会社リストサザビーズインターナショナルリアルティは、富裕層の顧客から高い評価を獲得しています。
同社はMatterportプラットフォームを活用して、世界中の顧客が日本の高級物件を見学できるようにしています。
従来の写真に比べてMatterportで撮影したデジタルツインは、寸法精度が非常に高く、詳細が明瞭なため、上質な顧客サービスが提供できています。
(参考:https://matterport.com/ja/industries/case-studies-0)
2.製造(工場)|旭化成
旭化成では化学プラントのデジタルツインを構築しています。
旭化成では、原則ベテラン技術者を各プラントに配置しています。
しかし、ベテラン技術者の人数が限られており、出張中や退社後に対応できる人材が現場にいない場合も少なくないそうです。
そこで同社では、ベテラン技術者が現場に出向かずとも遠隔で対応できる体制を構築するために、デジタルツインを開発導入しています。
(参考:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01970/030200006/)
3.建築|鹿島建設
鹿島建設では建築現場のデジタルツイン「3D K-Field」を開発しています。
システム開発を手掛けるアジアクエスト、GIS(地理情報システム)に特化したソフトウェア開発を提供する「マルティスープ」との共同開発です。
現場に設置されたIoTセンサーで取得した、ヒトやモノのデータを仮想空間上に表示し、リアルタイムに建設現場の状態を可視化しています。
(参考:https://www.kajima.co.jp/news/press/202005/11a1-j.htm)
4.医療|武田薬品工業
武田薬品工業とPwCコンサルティング合同会社は、武田薬品の臨床試験データを用いてクローン病(炎症性腸疾患の一種)のデジタルツインシミュレーションツールを用いた活動を開始すると発表しました。
この活動には、PwCの人体モデリング・シミュレーション技術である「Bodylogical」が活用されています。
「Bodylogical」はバーチャル空間上で臨床症状や投薬情報を用いてデジタルツインを作成し、個々人に合わせた治療シナリオをシミュレーションする技術です。
この技術を使用したシミュレーションツールはタブレット上で動くアプリケーションで、さまざまな治療成果をシミュレーション。
そうすることで、ペイシャント・ジャーニー(患者が病気を認知し、治療を進めていくプロセスでの考えや行動を把握するためのツール)への理解を深めることを可能にします。
(参考:https://www.pwc.com/jp/ja/press-room/takeda-project210518.html)
5.行政|東京都
東京都は「デジタルツイン実現プロジェクト」として、2030年のデジタルツイン社会実装を目指しています。
活用分野は防災、まちづくり、モビリティ、エネルギー、自然など多岐にわたり、都政のサービスをアップグレードし、都民生活の質の向上を目指しています。
現在は社会実装に向けた検証としてベータ版事業を実施し、リアルタイムデータの業務活用の試行・検証を実施しています。
(参考:https://info.tokyo-digitaltwin.metro.tokyo.lg.jp/)
また子ども向けのサイトでは、3Dモデルを活用したバーチャル社会科見学ツアーを実施しています。
教育機関でもデジタルツイン技術が大きく活躍しています。
(参考:https://tokyo-kodomo-hp.metro.tokyo.lg.jp/)
デジタルツインとは
デジタルツインとは、リアル空間(現実世界)に実在している物体や環境から情報をIoTなどで収集し、仮想空間でリアル空間を再現する技術概念です。
デジタルツインには、「効率化」「品質向上」「リスク低減」「コスト削減」などの強みがあり、幅広い分野での活用が進められています。
シミュレーションとの違い
シミュレーションとは、実物と近い条件の環境や、設備・製品によって実証試験を行うことで、デジタルツインもシミュレーションの一種です。
デジタルツインとこれまでのシミュレーションとの大きな違いは、リアル空間と仮想空間との「双方向性」と、インターネットを活用した「リアルタイム性」にあります。
IoTがリアルタイムで収集したデータをAIが分析し、現実世界の変化とリアルタイムで連動できることがデジタルツインの大きな特徴といえます。
メタバースとの違い
メタバースとは「Meta(超越)」と「Universe(宇宙)」を組み合わせた造語です。インターネット上に構築された仮想空間やそのサービスを指します。
構築された仮想空間内においてアバターを介して活動できるサービスで、「コミュニティ形成」という観点に主眼が置かれています。
それに対してデジタルツインは、リアル空間(現実世界)に実在している物体や環境から情報を収集し、デジタル空間で再現する技術概念を指します。
デジタルツインを企業が導入するメリット・デメリット
デジタルツインの導入には多くのメリットがありますが、もちろんデメリットも存在します。
導入後の後悔しないために、メリット・デメリットを理解しておくようにしましょう。
デジタルツインのメリット
デジタルツインのメリットは、提供する商品・サービスの品質向上やリスク軽減を実現できることです。
デジタル上での継続的なシミュレーションが実施可能です。またトラブルの予測が可能なため、オペレーションの効率化や標準化にもつながります。
さらに、生成したデジタルツインをデータとして残すことで、技術の継承にもなります。
価値のあるノウハウを社内で共有し、継承していくことで、社内の繁栄にもつながるでしょう。
デジタルツインのデメリット
デジタルツインのデメリットとしては、次の2点でしょう。
- 高額な費用負担
- 導入と管理に高度な技術力が必要
システム構築の初期投資、メンテナンス、データ収集の運用費用が発生します。
また、デジタルツインを扱える人材確保も必要となるでしょう。
適任の人材がいない場合、まずは外部に委託するのも選択肢の一つといえます。
デジタルツインで企業の新しい未来を創造しよう!
さまざまな業種業態で、バーチャル空間を活用したデジタル化が進んでいます。
特に現実空間をデジタル化するデジタルツインは多くの企業が取り入れ、実装フェーズにあります。
企業にとって、作業の効率化や生産性の向上、人件費コストの削減、技術の継承など多くのメリットが期待でき、顧客とのエンゲージメント向上にも繋がります。
デジタルツインを活用して企業の新しい未来を創造していきましょう。
弊社は、Matterportを使ったデジタルツイン(3Dモデル)の生成が可能です。
不動産・住宅・建築・美術館・小売・製造をはじめ、業界業種問わず1,800施設以上のデジタルツインを実現した実績があります。
「デジタルツインを導入したい」「DXしたいが具体的な方法がわからない」「3Dモデルを使ってビジネスモデルを変革したい」など、お気軽にご相談ください。