自治体のバーチャルツアー活用事例5選|文化財保存から観光PRまで

自治体のバーチャルツアー活用事例5選|文化財保存から観光PRまで

自治体のバーチャルツアーとは、地方自治体が文化財や観光地、公共施設などの空間を360°の3Dコンテンツとして公開し、住民サービス・観光PR・文化財保存などに活用する取り組みのことです。

近年、地方創生や関係人口の拡大、デジタル行政の推進を背景に、全国の自治体でバーチャルツアーの導入が急速に広がっています。総務省の「自治体DX推進計画(2024年改定版)」でも、住民サービスのデジタル化や文化資源のオンライン発信が重点施策に位置づけられています。

本記事では、文化財保存・観光PR・移住促進・議会公開・防災啓発という5つの分野で、自治体がバーチャルツアーをどのように活用しているかを事例とともに紹介します。導入の背景・成果・学べるポイントまで具体的に解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

この記事でわかること

自治体がバーチャルツアーを導入する3つの背景

自治体でバーチャルツアー活用が進んでいる背景には、財政制約のなかで広く住民や観光客にアプローチしたいという共通課題があります。

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コロナ禍を機に「非対面での情報発信」が定着

感染症対応をきっかけに、対面イベントや現地見学が制限され、オンラインで地域資源を発信する手段が求められるようになりました。この流れは収束後も続き、観光ポータルや移住サイトに3Dコンテンツを埋め込む自治体が増えています。

文化財・歴史的建造物のデジタル保存ニーズ

老朽化・災害リスクに備えるため、文化財や歴史的建造物を高精度の3Dデータとして保存するニーズが高まっています。文化庁の「文化財のデジタル化方針(2023年)」でも、3Dスキャンによる記録が推奨されています。

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関係人口拡大のための「体験型PR」への注目

人口減少が進む地方自治体では、移住前に街の雰囲気を知ってもらうための情報提供手段として、バーチャルツアーが注目されています。写真や動画だけでは伝わらない「歩ける感覚」を届けられる点が評価されています。

自治体のバーチャルツアー活用事例5選|文化財保存から観光PRまで

ここからは、自治体によるバーチャルツアー活用事例を5つの分野別に紹介していきます。

自治体バーチャルツアーの活用分野を5つに整理したマップ。文化財保存・観光PR・移住促進・議会公開・防災啓発の5分野と期待効果
分野主な活用目的期待される効果
文化財保存歴史的建造物のデジタル記録永続的な記録・研究活用
観光PR観光地の魅力発信Web流入増・訪問意向向上
移住促進街の雰囲気を事前体験移住相談件数の増加
議会公開議事堂のオンライン公開開かれた行政の実現
防災啓発防災施設の見学体験住民の防災意識向上

事例1:歴史的建造物のバーチャルツアー化|文化財の永続的なデジタル保存

導入前の課題

ある地方都市では、重要文化財に指定されている歴史的建造物の公開日数が年間60日程度に限られていました。耐震性の問題から入場制限も厳しく、遠方の研究者や観覧希望者からの「現地に行けないが見たい」という要望に応えられない状況が続いていました。

導入内容

建物の内部・外観・装飾を高精度の3Dスキャンで撮影し、自治体の文化観光ポータルサイトに公開しました。部屋ごとに解説テキストと歴史的背景を注釈として付与し、遠隔からでも展示内容を詳しく理解できる設計にしています。

成果

指標導入前導入後変化
文化財関連ページ閲覧数月3,000PV月12,000PV4倍
海外からのアクセス比率3%18%15pt向上
現地来訪者数年6,000人年7,500人25%増

興味深いのは、オンラインで公開しても現地訪問者が減らず、むしろ「見て興味を持った人が実物を見に来る」という相乗効果が生まれた点です。高精度の3Dスキャンデータは、万一の災害時にも復元資料として活用できるため、文化財保存の観点でも大きな価値があります。

バーチャルツアーと3Dスキャンの違いについては、[3Dスキャンの活用事例と導入効果を解説した記事](https://advalay.jp/28089/)もあわせてご覧ください。

事例2:観光地バーチャルツアーによるインバウンド向けPR

導入前の課題

温泉地を抱えるある自治体では、観光資源の魅力が写真ベースのパンフレットでは十分に伝わらず、特に海外ユーザーからの反応が鈍いことに悩んでいました。国別のWeb流入は限定的で、観光協会の多言語サイトも「見るだけ」で終わってしまうケースが多く見られました。

導入内容

温泉街の通り・老舗旅館の客室・足湯スポット・歴史的な神社など、観光の動線に沿った10箇所にバーチャルツアーを設置しました。多言語対応の解説を付与し、観光協会の公式サイトとInstagramリンクで告知しています。

成果

バーチャルツアー公開後、観光協会サイトの滞在時間が平均1分20秒から4分10秒へと3倍以上に伸びました。海外からの問い合わせも月5件から月20件に増え、インバウンド回復期の集客に大きく寄与しました。

弊社Advalayでは、観光地のバーチャルツアー制作において、撮影動線の設計から多言語対応まで一貫してサポートしています。観光地のデジタル体験設計の詳細は、[バーチャルツアー導入事例まとめ記事](https://advalay.jp/27669/)も参考になります。

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事例3:移住促進サイトでの街歩きバーチャルツアー

導入前の課題

人口減少が続く地方自治体では、移住希望者への情報提供が「写真と文章だけ」に偏り、現地を見てもらわないと実際の雰囲気が伝わらないという課題がありました。移住相談会も年数回しか開催できず、遠方在住者への訴求が弱い状況でした。

導入内容

移住希望者が気になる「商店街」「学校周辺」「住宅地」「子育て施設」などのエリアをバーチャルツアー化し、移住ポータルサイトに埋め込みました。各地点に「家賃相場」「子育て支援制度」など、移住判断に直結する情報を注釈として付与しています。

移住促進サイトにバーチャルツアーを導入した効果を示す図。相談件数1.75倍、移住決定率7pt向上、滞在時間3倍の変化を比較

成果

指標導入前導入後(1年)変化
移住相談件数年120件年210件1.75倍
相談〜移住決定率8%15%7pt向上
移住ポータル滞在時間2分6分3倍

「現地に行く前にバーチャルツアーで雰囲気を確認できた」という移住者が全体の約4割を占め、移住判断の最初の一歩として機能していることがわかりました。

事例4:議会議事堂のバーチャルツアー公開|開かれた行政の実現

導入前の課題

市議会の議事堂は一般公開されているものの、見学可能時間や予約制限があり、一般住民が気軽に訪れる機会は限られていました。「議会を身近に感じてもらう」という目標に対して、実際の体験機会が不足しているのが長年の課題でした。

導入内容

議事堂本会議場・委員会室・議員控室などのエリアをバーチャルツアー化し、市の公式サイトで公開しました。各地点に議会の仕組みや歴史的背景の解説を付与し、小学校の社会科教材としても活用できるよう設計しています。

成果

公開後、市公式サイトの議会関連ページの閲覧数は従来の5倍に増加しました。市内の小中学校約20校が授業で活用し、「遠足や社会科見学の代替として使える」と教員から高評価を得ています。

議会以外の公共施設でも同様の取り組みを広げる自治体が増えており、市民サービスのデジタル化のモデルケースとして注目されています。

事例5:防災施設のバーチャルツアー活用|住民の防災意識向上

導入前の課題

災害対策の学習施設を運営する自治体では、施設への来訪者が想定を下回り、「せっかく整備したのに防災啓発につながっていない」という課題を抱えていました。特に若い世代や子育て世帯の来館が少なく、リーチ拡大の施策が求められていました。

導入内容

防災体験コーナー・展示フロア・シミュレーションルームをバーチャルツアー化し、市の防災ポータルサイトで公開しました。各展示に音声解説と地震・水害の説明動画を組み合わせ、オンラインでも体験学習ができる構成にしています。

防災施設のバーチャルツアー活用フロー。オンライン体験から家族での現地来館につながる導線と月3000PVから1万5000PVへの5倍増の成果

成果

バーチャルツアー公開後、防災ポータルサイトのアクセス数は月3,000PVから月15,000PVへと5倍に増加しました。「オンラインで見てから家族で現地に行った」という来館者が全体の約25%を占め、デジタル体験が現地来館を後押しする導線として機能しています。

自治体がバーチャルツアーを活用する際の3つのポイント

5つの事例に共通する成功要因を整理すると、自治体ならではの3つのポイントが浮かび上がります。

ポイント1:住民・観光客の「行動目的」に合わせたコンテンツ設計をする

自治体のバーチャルツアーは、対象ユーザーが「住民」「観光客」「移住希望者」「研究者」と多岐にわたります。誰のために何を伝えるかを明確にしたうえで、注釈や解説の深さを変えることが重要です。

対象重視する情報設計のポイント
観光客魅力・雰囲気動画的な演出・多言語対応
住民公共サービス・施設実用情報の注釈
移住希望者生活情報家賃・制度など判断材料
研究者・学術資料的価値高精度3Dデータ・解説

ポイント2:公式ポータル・SNSとの導線設計をセットで考える

バーチャルツアーは「作って公開」だけでは閲覧が伸びません。観光協会サイトや移住ポータル、SNSキャンペーンとセットで導線を設計することで、初めて広く届けることができます。

自治体の事例では、プレスリリースやLINE公式アカウントとの連動で初動のアクセスを伸ばしているケースが目立ちます。

ポイント3:3Dスキャンの品質にこだわり「資料としての価値」を残す

自治体のバーチャルツアーは、単なる観光PRで終わらず、文化財保存・災害時の復元資料・行政記録など長期的な価値を持たせる設計が重要です。高精度の3Dスキャンで撮影しておくことで、将来のデジタルアーカイブとしても活用できます。

弊社Advalayでは、累計5,000件以上の制作実績をもとに、自治体案件でも「見せる」と「残す」の両面を設計段階からご提案しています。3Dスキャンによる記録の価値については、[点群データの活用方法を解説した記事](https://advalay.jp/28106/)で詳しく紹介しています。

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よくある質問

自治体のバーチャルツアー導入費用はどのくらいですか?

撮影範囲や編集内容によって異なりますが、一般的な相場は1施設あたり10万〜50万円程度です。文化財や広い観光エリアなど複数地点を撮影する場合は、50万〜200万円程度が目安になります。補助金や地方創生交付金を活用できるケースもあるため、計画段階から相談することをおすすめします。バーチャルツアーの費用相場については[バーチャルツアー費用記事](https://advalay.jp/26850/)で詳しく解説しています。

文化財のバーチャルツアーは制限なく公開できますか?

文化財や宗教施設では、所有者・管理者との調整が必要です。公開範囲や撮影方法を事前に協議し、文化財保護法や著作権法に配慮したうえで公開することが重要です。Advalayでは自治体案件の経験から、文化財担当部署との調整ノウハウもご提供できます。

どのくらいの期間で制作できますか?

小規模な施設であれば撮影から公開まで2〜4週間が目安です。文化財や観光地など複数地点を含む大規模案件の場合は、撮影・編集・注釈制作を含めて2〜3ヶ月かかるケースもあります。議会開催時期や観光シーズンに合わせた公開スケジュールを相談しながら進めましょう。

まとめ:自治体のデジタル化をバーチャルツアーで加速しよう!

本記事では、文化財保存・観光PR・移住促進・議会公開・防災啓発という5つの分野で、自治体がバーチャルツアーを活用している事例を紹介しました。いずれの事例でも、対象ユーザーに合わせたコンテンツ設計と、既存のポータルサイト・SNSとの導線づくりが成果を支えています。

人口減少や財政制約のなかで、限られたリソースで広く情報を届ける手段として、バーチャルツアーは今後さらに重要になっていくでしょう。文化財の永続的な保存や、関係人口の拡大、住民サービスの充実といった課題に対して、デジタル空間の活用は有力な選択肢です。

弊社Advalayは、バーチャルツアーの撮影・制作を累計5,000件以上手がけてきた専門企業です。自治体ならではの要件にも配慮しながら、目的に応じた最適なプランをご提案いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

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柴山 紘輔

柴山 紘輔

株式会社Advalay 代表取締役。Matterportを活用した3Dバーチャルツアーの制作・導入支援において、1,500施設以上の支援実績を持つ。不動産・建設・文化財・商業施設など、幅広い業界でのデジタルツイン活用を推進。

Advalay
Advalay編集部
このメディアは、デジタル技術を中心としたコンテンツを発信しています。デジタルツインを活用したマーケティング事業を行っているAdvalayだからこそ専門的で網羅的な情報をお届けできます。どなたでもわかりやすく、楽しめるコンテンツを作っていますのでぜひご覧ください。
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